患者さんとのコミュニケーションがうまく取れていない、業務の効率化ができていないなどの悩みを抱えるクリニックや診療所は少なくありません。
昨今はこのような課題を、LINEで解消できることはご存知でしょうか。
今回は、株式会社ジャパンパシフィックマネージメント代表の冨田さんに、LINEを活用した業務の効率化と適切なセグメント配信に加えて、新人スタッフの教育を自動化させた「診療所のLステップ導入事例」をご紹介いただきました。
株式会社ジャパンパシフィックマネージメント代表取締役。Lステップ認定コンサルタント。ハウスメーカーや医療サービス、税理士や専門性の高いサービスを販売している企業のLINE構築・運用支援が得意。「クライアントと一生のパートナーになる」をモットーに、働く皆様の想いや歴史的背景を何よりも大切にしたコンサルティングを行っている。
目次
LINE公式アカウントは運用していたが課題があった
――さっそくですが、今回ご紹介いただく事例アカウントについて教えていただけますか。
――構築をされたのはいつ頃でしょうか?
冨田さん
2022年5月頃です。
――現在まで運用支援もされていますか?
冨田さん
運用は基本的にクライアント自身でしています。
納品後に緑町診療所で働くスタッフの方々向けに内製化研修を行ったうえで、約2年間ほどサポートをさせていただき、現在では完全に自走をされています。
――冨田さんが構築に携わる前から、緑町診療所様ではLINE公式アカウントやLステップの導入・運用はされていましたか?
冨田さん
LINE公式アカウントは利用されていましたが、Lステップは導入していませんでした。
――その他のSNSは活用されていましたか?
冨田さん
Instagram、X、Facebookなど、院長の稲熊先生自身も含め、積極的にSNS運用されていました。
――緑町診療所様がLステップを導入するきっかけや、冨田さんが構築に携わることになった経緯をお聞かせいただけますか。
冨田さん
稲熊先生とはもともと10年来の知り合いで、開業当時からLINE公式アカウントをかなり使いこなしていたことも知っていました。
稲熊先生はかなりITリテラシーも高く、当時でも3,000人以上の友だちがいて、配信もかなりこまめに行なっていましたが、プロとして改善できる施策があるなら提案をしてみてほしいと依頼をいただきました。
実際に提案した内容としては、友だち追加の導線を整理し、外部の診療アプリとの連携や元々アナログで行っていた新人スタッフに向けた研修をLINE上でe-ラーニング化させることなどを提案し、診療所外での患者様とのコミュニケーションや現場の業務が効率化できる点に魅力を感じて導入を決めてくださいました。
千歳市の人口の1.7割にあたる17,000人が友だち追加
――緑町診療所様が抱えていた課題をお聞かせください。
冨田さん
主な課題としては次の通りです。
課題
- 患者様に合った発信ができていない(住まいや年齢などのセグメントを分けて、適切な配信ができていない)
- 稲熊先生やスタッフの業務が多忙になっていた(コロナ関連の問い合わせが急増した)
普段から日常的にLINE公式アカウントは運用されていましたが、流入経路や友だちごとの個人情報の取得や管理が出来ていなかったので、それぞれの方の状況に合わせた配信ややり取りが出来ていないという課題がありました。
また、当時は新型コロナウイルスに関連する、ワクチン接種や発熱外来に対する質問などの問い合わせ対応に追われていて、業務の効率化が急がれる状態でした。
――課題に対する冨田さんのご提案をお聞かせいただけますか。
冨田さん
まず、そもそもの導線としてHPや各種SNSなどから来院前にLINEに友だち追加をしていただいたうえで予約をしていただく導線にしました。
これにより友だち追加時に現在の状況や簡易的な個人情報を伺うことで、すぐに来院に繋がらなかったとしても、ある程度の個人情報が取得できるようになりました。
リッチメニューには外部の診療アプリと誘導する区画を用意し、シームレスに患者様が予約や診察受付などをできるようにしました。
あらゆる調査などを見てもクリニックや診療所で最も嫌がられることの圧倒的1位は待ち時間が長いことですので、その不満を解消できるような導線になっています。
【問診票】
その他、ワクチンの予約接種やアクセス、よくある質問などを設置し、受付スタッフの電話対応や予約受付、カルテ作成の準備などあらゆる工数を削減しました。
【患者様向けリッチメニュー】
さらに、スタッフのe-ラーニング用セグメントリッチメニューを作成し、新人スタッフに向けた教育用マニュアルを作成しました。
【e-ラーニング用セグメントリッチメニュー】
教育用マニュアルは全ての動画にミニテストを付けて、どのスタッフがどの程度学んでいるか、理解度やつまずくポイントを見える化し、教育をする側・される側の労力を削減しました。
これにより、従来稲熊先生が行っていた研修数十時間分を短縮でき、言った言わない・聞いた聞いていないなどのトラブルの激減にも繋がりました。
また、スタッフの理解度を個別に把握することで現場でフォローしやすくなるなどのメリットもあったようです。
――LINE公式アカウントへの友だち集めはどのようにされていますか?
冨田さん
友だち追加経路としては、ホームページからの流入が一番多いですが、受付でQRコードを読み取ってもらう経路からの流入も多くあります。
これまで一切広告を使わずに、現在では友だち数が17,000人を超えています。
【緑町診療所様ホームページ】
――診療所のアカウントで17,000人以上の友だち数ってすごいですね。
冨田さん
はい、千歳市の人口の1.7割が友だち追加している計算です。
もちろん友だちの中には千歳市民以外もいるので、厳密に言えば差異はありますが、それでもすごいことだと思います。
特に友だち数が伸びたのはPCR検査の時でした。
LINEを活用した非接触での検査体制の確立が、北海道新聞などでも大々的に取り上げられました。
緑町診療所は新千歳空港にも非常に近い診療所なので、出張や観光で到着された方やこれから出発された方もそれぞれいたと思います。
――友だち数が増えて運用の大変さはありましたか?
冨田さん
友だち数が増えるにつれて、来院前後の問い合わせ対応など業務が急増しました。
その他にもコロナ禍の最中は国の政策が変わりやすかったので、都度患者様に配信した内容への返答業務もかなり大変だったと思います。
当時はLINE公式アカウントの運用や操作方法を理解しているスタッフもいなかったので、ほぼ全て稲熊先生が対応していてかなり負担になっていたと思います。
そこで緑町診療所のスタッフ向けに20時間の内製化研修を実施して、スタッフの方々でも操作・運用できるようにしました。
20時間の内製化研修を実施
――内製化研修もされたんですね。
冨田さん
はい。内製化研修では、基本的な操作方法はもちろん、友だち追加や導線づくりの考え方、配信施策の立案方法、細かなライティングやリッチメッセージなどのクリエイティブ制作時の注意点など、座学+課題+フィードバックを繰り返し、かなりレベルの高い運用ができるようになったと思います。
この内製化研修を受けてくださったスタッフの方が、千歳市にある千歳科学技術大学の学生アルバイトで元々ITリテラシーが非常に高かったことも良かったと思います。(今では緑町診療所に就職された)
マニュアルづくりもサポート
――その他工夫した点はありますか。
冨田さん
元々稲熊先生がアナログで行っていた研修をe-ラーニング化させ、約8時間の研修内容を動画にしてスタッフ用のリッチメニューに設置し、各章ごとに動画の視聴とミニテストを促すことで研修にかかる時間を大幅に削減しました。
「アウトプットする」から動画視聴後の理解度を回答フォームで提出することで次の研修動画へ進める導線になっています。
動画は決まった順番でしか視聴できないように設定しているので、順番を飛ばそうとすると注意メッセージが送られます。
――スタッフ研修をLINEで自動化している診療所は、かなりめずらしいですよね。
冨田さん
はい、稲熊先生は今後どんどん分院展開をしていきたいと仰っていたので、極力稲熊先生の時間を節約し、稲熊先生自身にしかできない業務に集中してほしいとの想いから最も力強くプレゼンした部分です。
Lステップ導入前は新しいスタッフが入るたびに稲熊先生ご自身で作った研修用のスライドを印刷して、一人ひとりに研修を行っていました。
その時間を稲熊先生の時給で換算したら一体年間でいくらのコストがかかってるのだろう?と感じました。
提案当初はあまりピンときてないような感じでしたが、結果として直近約1年で新しく入ってきたスタッフ約10人の研修時間はほぼ削減できたそうです。
稲熊先生がご自身で作った研修用スライド180Pも全て最適化(リデザイン)しました。
【作成した教育用資料の一部】
【作成した教育用資料の一部】
資料の最適化、台本作成、音声解説録音、動画作成・編集、ミニテストの構築など膨大な作業量でしたが、喜んでいただけてとても嬉しかったです。
【作成した研修用動画の一部】
【作成した研修用動画の一部】
地震発生から1時間以内にすかさず配信
――Lステップだからできた、と感じたことはありましたか。
冨田さん
令和5年6月に北海道浦河沖を震源とする地震が発生した際に緑町診療所がある千歳市でも最大震度5弱を観測しました。
当時稲熊先生は少し離れた場所にいたそうですが、テレビで「千歳市が震度5」というニュースを見て、すぐスタッフに指示を出し、千歳市周辺にお住まいの患者様に対して緊急配信を行いました。
内容としては、安否の確認、避難先や怪我・病気になった時の緊急対応病院の案内などです。
現場スタッフもすぐに配信内容をまとめ、結果として地震発生から1時間以内に該当の区域の方全員へ配信が出来たそうです。
配信後、来院された患者さんから「こんな風に見守ってくれてるかかりつけ医はいないです」といったお声をいただいたと聞かせていただきました。
これはまさにLステップを導入していたからできたエピソードだと感じました。
――稲熊先生はLステップを導入して、どのような感想を持たれていますか?
冨田さん
稲熊先生は、コロナ禍をきっかけに医療機関と患者さんの関係がすっかり変わり、患者さんの中には医療機関に対して、すごく不満とか不信感が育ってしまった方が潜在的に多くいると感じているそうです。
今までの医療というのは、ドクターが医療機関で患者様を待っていて、医療機関に来てくれた患者様とだけコミュニケーションを取ったり医療サービスを提供することが主流でしたが、今後は医療機関から見えないところでも患者様に対して必要なメッセージを届けたり、訪問診療やオンライン診療でご自宅まで直接医療サービスを届けたりどんどんニーズが変わってきていることを感じているそうです。
時代のニーズに合わせて、従来の業務を効率化したり、そもそもの医療サービスの変化が求められる中で今回Lステップのようなツールを導入して患者様と直接コミュニケーションを取れる仕組みを構築できたことはすごく良かったとおっしゃっていただいてます。
今後はこういった取り組みを医療業界全体に広げていきたいとも言っていただけて、コンサルタントとして非常に嬉しかったです。
絵に描いた餅で終わらせない「実行力」
――冨田さんの拠点はどちらですか?
冨田さん
会社は大阪府です。
――対応エリアは全国ですか?
冨田さん
はい、全国対応しています。
――得意とする業種・業態はありますか?
冨田さん
ハウスメーカーや不動産など単価の高い商品を取り扱う企業や、整形外科や美容外科などの自費診療の医療サービスで、特にリスティング広告などWeb広告を活用している企業を得意としています。
あとは、会計士や税理士のような契約期間が長い商品を扱っている事業者や、講師・著者など専門性の高い業種が得意です。
――構築後、運用まで担当するケースが多いですか?
冨田さん
基本的に構築単発の依頼は受けていなくて、コンサルティング契約とセットで受けています。
Lステップを構築してそのまま納品しても、きちんと運用できるクライアントは少ないので、基本的には継続的にお付き合いさせていただくクライアントが大半です。
――どういう経緯でご依頼がくるケースが多いですか?
冨田さん
既存クライアントのつながりで連絡いただくことが多いですが、法人のクライアントを持つ会計士、弁護士などの士業や別領域のコンサルティング会社など各種専門家の方々からご紹介をいただくことも多いです。
その他、僕がYouTubeチャンネルをやっているので、YouTubeなどのSNS経由やセミナー経由もあります。
最近では、LINE公式アカウント/Lステップに関する書籍も出版したので、書籍経由でのお問い合わせも増えてきました。
――冨田さんのYouTubeチャンネルも好評ですよね。
冨田さん
ありがとうございます。やっぱり、クライアントとの生の声はとてもリアリティがあるので見込み客やクライアントからはもちろん、同業者の方々からも評価をいただいています。
――冨田さんの強みや、クライアントワークをする上で大切にしていることをお聞かせいただけますか。
冨田さん
まとめ
今回は株式会社ジャパンパシフィックマネージメント代表の冨田さんに、診療所のLステップ導入事例をご紹介いただきました。
Lステップの構築だけでなく運用込みでご依頼したい方、二人三脚でしっかりと寄り添ってもらいたい方に、冨田さんはぴったりです。ご相談を希望される方は、以下のHPからご連絡してみてください。