今、企業の販売方法や顧客対応を大きく変えつつある「ショールーミング」。
消費者が実店舗で商品を確認し、オンラインで購入する行動が一般化するなか、企業はどのように対応すべきか悩んでいるのではないでしょうか。
本記事では、ショールーミングの基本から具体的な対策まで、成功事例をまじえて解説します。
目次
ショールーミングとは何?
ショールーミングとは、消費者が実店舗で商品を確認したあと、オンラインで購入する行動です。
消費者にとっては、店頭で商品の良さを確かめてから、オンラインでお得に購入できるメリットがあります。
しかし店舗側は、来店客が店舗でなくオンラインで買うことで、売上が減少する問題が発生するのです。
ショールーミングは消費者にとって便利である一方、店舗には新たな対応が求められる課題となっています。
ショールーミングが起きやすい商品とは?
ショールーミングが起こりやすい商品には、いくつかの特徴があります。
ショールーミングが起こりやすい理由とともに、代表的な商品ジャンルを見てみましょう。
商品ジャンル | 消費者の心理 |
電化製品 | 機能や操作性を専門家(店員)に説明してもらいたい |
アパレル製品 | デザインや着心地、サイズ感を確かめたい |
家具やインテリア | 質感やサイズ感を確認したい |
化粧品 | 肌に合うかどうか、香りや質感を試したい |
実際に商品を確認することが購買意欲につながる商品ほど、ショールーミングが起こりやすい傾向です。
ウェブルーミングとの違い
ショールーミングとは逆の行動が「ウェブルーミング」です。ウェブルーミングは、消費者がオンラインで商品情報を調べたあと、実店舗で商品を購入する行動を指します。
ウェブルーミングが選ばれる理由は次の3つです。
- 送料を節約したい
- 商品をすぐに手に入れたい
- 購入前に実物を最終確認したい
ショールーミングもウェブルーミングも、実店舗での確認が重要な役割を果たしています。
消費者がショールーミングをする理由
ショールーミングは消費者にとって便利な選択肢です。
ここでは、消費者がなぜショールーミングを選ぶのか、主な理由を3つ解説します。
消費者の心理を理解すると効果的な戦略が立てられます。
スマートフォンとECサイトの普及
スマートフォンとECサイトの普及により、消費者の購買行動は大きく変化しました。
スマートフォンを使えば、消費者はいつでもどこでも商品を検索し、オンラインで購入できるようになりました。
さらに、Yahoo!ショッピングや楽天市場などのECモールや価格比較サイトの登場で、複数の店舗の価格を比較し、自分にぴったりの購入先を見つけやすくなっています。
こうした便利な環境が整ったことで、実店舗で商品を確認したあと、オンラインでよりお得に購入するショールーミング行動がますます広がっています。
実店舗よりも低価格で手に入る
ショールーミングを選ぶ理由として、価格面でのメリットも挙げられます。
オンラインショップは運営コストを抑えられるぶん、実店舗よりも安く商品を提供できることが多い傾向です。
また、消費者はスマートフォンを使ってその場で他店の価格を確認できるため、より安く購入できる可能性が広がります。
オンラインショッピングの価格競争が激しくなり、実店舗で商品を確認してから、もっともお得な方法で購入するのが一般化しつつあります。
商品を持ち帰る手間が省ける
ショールーミングのもうひとつの魅力は、商品を持ち帰る手間が省けることです。
とくに大型の家具や重たい家電を店舗で購入すると、持ち運びが大変です。
しかし、オンラインで注文すれば配達サービスで自宅まで届けてもらえるため、わざわざ運ぶ必要がありません。
さらに店舗で在庫がない商品も、オンラインで注文すれば確実に手に入る安心感も消費者がショールーミングを選ぶ理由のひとつです。
ショールーミングに店舗が対応する5つの方法
ショールーミングが広がるなか、新しい消費行動に適応するための戦略に悩むことでしょう。
ここでは実店舗を持つ企業が、競争力を維持する5つの方法を紹介します。
店舗ならではの購入体験を提供する
ショールーミング対策には、実店舗でしか得られない特別な体験を提供することが大切です。
たとえば、化粧品店でプロのメイクアドバイスやタッチアップを受けられることは、オンラインにはない魅力です。
また、アパレルショップでは、スタイリストがその人にぴったりのコーディネートを提案することで、消費者に特別な価値を感じてもらえます。
ほかにも、肌診断やパーソナルカラー診断、骨格診断など、専門的なサービスを通じて顧客に満足感を与える方法も効果的です。
オフラインの店舗に集客する
O2O(オンライン・トゥ・オフライン)とは、オンライン情報を活用して店舗に消費者を誘導する方法です。
具体的には、LINEのビジネス用アカウント「LINE公式アカウント」や、自社のHPを通じて店舗限定のクーポンを発行する方法も一案です。
調査によると約60%以上の消費者が、LINEの配信をきっかけに行動を起こした経験があることがわかっています。※自社調べ
消費者が手軽に使えるオンラインの特性を活かし、店舗の売上向上につなげる戦略が有効です。
自社のECから購入してもらう工夫をする
店舗で商品を確認した消費者が、他社のオンラインショップに流れるのを防ぐための工夫も欠かせません。
たとえば、自社アプリを通じて商品情報や口コミを簡単に確認できるようにしたり、オンラインショップの初回限定クーポンを配布したりする施策が挙げられます。
クーポンの配布には、メルマガやLINE公式アカウントなど、顧客との連絡手段を得られる方法を選ぶと集客に便利です。
そのなかでも、LINEはほぼすべてのメッセージを確認する割合が約60%と、もっとも高い数値がでています。※自社調べ
消費者に確認してもらいやすいツールを活用し、自社のECサイトで購入するメリットを確実に伝えていくことが重要です。
ショールーミングストアを設置する
ショールーミングストアは、商品をその場で販売するのではなく、消費者に商品を試してもらうための店舗です。
在庫を抱える必要がなく、レジも不要なため、運営コストを抑えられます。
また、単に商品を展示するだけでなく、消費者が参加できるイベントやサービスを展開し、商品の良さを直接体感してもらう施策も可能です。
たとえば、キッチン用品店での料理教室や、バーチャル技術を活用した家具の配置シミュレーションなどが好例です。
OMO・オムニチャネルで他社ECサイトへの流出を防ぐ
OMO(オンライン・マージス・ウィズ・オフライン)は、オンラインとオフラインの境界をなくし、消費者にスムーズで一貫した買い物体験を提供する戦略です。
たとえば、オンラインで購入した商品を店舗で受けとれるサービスや、ネットで貯めたポイントを店舗でも使えることが挙げられます。
このようなオムニチャネル戦略は、どこで買い物をしても一貫したサービスが受けられるため顧客満足度が高まりやすく、他社のECサイトへの流出を防げます。
さらに、ネットで買った商品の試着や返品交換を店舗で行えるなどの柔軟な対応が、顧客の囲い込みにつながります。
ショールーミング・ウェブルーミング対策の成功事例3選
ショールーミングやウェブルーミングへの対策は、今や多くの企業にとって欠かせない戦略となっています。
ここでは、対策を講じている企業の3つの成功事例を紹介します。
UNIQLO(ユニクロ)
UNIQLOは、オンラインとオフラインを融合させた購買体験を提供しています。その中心となるのが自社のアプリです。
消費者はアプリを用いて、商品の詳細情報や店舗ごとの在庫状況を確認しながら、効率的に買い物できます。
店頭で商品のバーコードをアプリで読み取ると、すぐに自社の商品ページにアクセスできるため、消費者が手間をかけずにオンラインでの注文を選びやすいのも魅力です。
さらに、オンラインで注文して店舗で受け取れば、購入金額にかかわらず送料がかからないサービスも、多くの消費者に支持されています。
ヨドバシカメラ
ヨドバシカメラでは、店頭で商品のバーコードをアプリで読み取ると、自社ECサイトの商品ページにアクセスできるシステムを導入しています。
システムを活用すると、消費者は店舗で商品を確認したあと、自宅でゆっくりと比較検討して好きなタイミングで購入できます。
また、店舗とECサイトでポイントが統合され、価格も統一されているため、どちらで購入しても損をする心配がありません。
店内での写真撮影も許可されているため、気になる商品を写真に収め、あとから再度確認して購入を検討することも可能です。
ZARA
ZARAは、ショールーミング対策の先駆者として知られています。とくに2018年に六本木で展開された、期間限定のショールーミングストアが大きな話題となりました。
ショールーミングストアでは商品を販売するのではなく、消費者が店頭で気に入った商品をアプリで読み取り、その場でオンライン注文できるしくみを導入。
支払いは店頭でもオンラインでも可能で、どちらで購入しても商品は自宅に配送されるため、持ち帰る手間がかからないのが魅力です。
さらに、アプリを使って試着室の予約をすると、待ち時間を減らし、よりスムーズにショッピングが楽しめる環境が整えられています。
ショールーミングを活用したマーケティング戦略をしよう!
時代に合った消費者心理をマーケティング戦略に取り入れることで、自社の売上やブランド力を向上させられます。
便利なツールを活用し、顧客の行動やニーズを正確に理解しながら、ショールーミングを逆手に取った効果的なマーケティング戦略を展開しましょう。