農協に卸しているだけだと付加価値を価格に反映できない、自社で直接販売しようと思ってもなかなか販路が広がらないといったことに悩む農家は少なくありません。
昨今はこのような農家の課題を、LINE公式アカウントやLステップ活用による仕組み化で解消できることはご存知でしょうか。
今回は、株式会社ジャパンパシフィックマネージメント代表の冨田さんに、LINE公式アカウントとLステップを活用して直接販売を行い売上アップに成功した「じゃがいも農家のLステップ導入事例」をご紹介いただきました。ぜひ参考にしてみてください。
株式会社ジャパンパシフィックマネージメント代表取締役。
Lステップ認定コンサルタント。ハウスメーカーや医療サービス、税理士や専門性の高いサービスを販売している企業のLINE構築・運用支援が得意。「クライアントと一生のパートナーになる」をモットーに、働く皆様の想いや歴史的背景を何よりも大切にしたコンサルティングを行っている。
目次
これまで一切直接販売を行っていなかった
――さっそくですが、今回ご紹介いただく事例アカウントについて教えていただけますか。
冨田さん
北海道のじゃがいも農家「ファームキムラ」様です。
――構築をされたのはいつ頃でしょうか?
冨田さん
2023年9月です。
――現在まで運用支援もされていますか?
冨田さん
はい、させていただいています。
――冨田さんが構築に携わる前から、ファームキムラ様ではLINE公式アカウントやLステップの導入・運用はされていましたか?
冨田さん
いえ、どちらも導入していない状態でした。
――ファームキムラ様がLステップを導入するきっかけや、冨田さんが構築に携わることになった経緯をお聞かせいただけますか。
冨田さん
ファームキムラ代表の名畑さんは、僕がニセコで飲食店をやっていた時のお客様で、飲み友達でもありました。
名畑さんはもともと有名なラーメン店の社員でしたが、奥様のご実家がじゃがいも農家で、後継者がいないことで廃業の危機と知って継ぐことになったそうです。
僕は仕事柄クライアントや取引先などによく贈り物をしていて、その際に名畑さんにお願いして特別にじゃがいもを発送してもらっていました。
そのじゃがいもを受け取った方々が口を揃えて「うちも取引先・家族に贈りたい」と言ってくれていて、このじゃがいもがいかに人に喜ばれるかを自身で体感していました。
なので、毎年のように個人向けの販売しませんかといった提案をしていたら「そこまで言うならやってみるか」となり、構築をお手伝いさせていただくことになりました。
主な要望は「販路の拡大」と「利益アップ」
――当時ファームキムラ様が抱えていた課題や要望は何でしたか?
冨田さん
主な要望は、次の2点です。
- 販路を拡大したい
- 利益を伸ばしたい
Lステップ導入前は、収穫したじゃがいものほぼ全てを農協に卸しており、直接販売は一部の親しい知人にのみ行っていました。
そのため一般的なじゃがいも農家に比べ、減農薬減肥料で手間やコストをかけてじゃがいもを作っても、付加価値を価格に反映できていない状態でした。
また、販売タイミングは年に1回の収穫時しかないので、毎年欠かさず買っていただくためのリピート施策を考える必要もありました。
――LINE公式アカウントは導入されていなかったとのことですが、その他のSNSは活用されていましたか?
冨田さん
その他のSNSも活用していなく、HPやショップカードもない状態でした。
――課題に対する冨田さんのご提案をお聞かせいただけますか。
冨田さん
- まずは、見込み客や既存顧客のリストをLINE公式アカウント上に集めること。
- そこにプロダクトローンチと同じような考え方で、種まきや収穫など発送までに行われる年間の作業の様子を配信し続けて、購買意欲を高めること。
- そして、自分用だけでは消費に限界があるじゃがいもを自分の親しい人に毎年送りたくなるような、じゃがいもを通した人間関係を豊かにするお手伝いをすること。
主にこの3つを提案しました。
また、指定した住所に毎年自動で配送される年間サブスクリプションのプランも用意し、お世話になっている取引先などへの送り漏れなどがないよう配慮した商品も提案しました。
リッチメニューやシナリオ配信では、ただじゃがいもの魅力を訴求するのではなく、じゃがいもがいかに人に喜ばれるか、贈り物を送った相手と人間関係を深めるコツなどを訴求しました。
自分自身がじゃがいもを贈って大切な人に喜んでいただいた経験からこういった提案をしましたが、結果としてクライアントにもエンドユーザーにも非常に喜んでいただけました。
リッチメニュー
実際に10キロのじゃがいもを贈ると、ポテトフライやカレー、じゃがバター、ポテトサラダなど定番の食べ方を一通り試してもまだまだ余る量なので、必ずと言っていいほどオススメの食べ方を聞かれます。
なので、クライアントと一緒に厳選した美味しいレシピ集を設置しましたが、こちらも好評でした。
レシピ集
――LINE公式アカウントへの友だち集めはどのようにされていますか?
冨田さん
LINE公式アカウントを作ったことを、名畑さんの電話帳に登録されている方へ、上から順に片っ端から連絡してもらったのと、パートで働いてくれているスタッフの方にも同様に、LINE公式アカウントへ友だち追加を依頼する声がけをお願いしました。
他には、じゃがいもを発送した際にLINE公式アカウントへ誘導するためのショップカードを同梱して、じゃがいもを受け取った方を翌年以降の見込み客として取り込みしました。
アカウント公開後2週間で約1.2トン販売
――Lステップ導入後の成果をお聞かせいただけますか。
冨田さん
昨年の新じゃがが出荷になる直前にアカウントを公開して、2週間程度で約1.2トンの販売ができました。
――わずか2週間程度で約1.2トンの販売はすごいですね。
冨田さん
あまり期間に余裕がなかったなかで、シナリオ配信のみでこれだけ売れたので構築チーム全員本当にホッとしました。
年間サブスクリプションプランでも110キロ販売することができたので、これを毎年積み上げていければいいなと思っています。
サブスクリプション
もともと、ファームキムラのじゃがいもは素人でも違いが分かるくらい味も美味しくて、受け取った方の満足度はとても高いと感じていました。
ですが仮にすごく満足したとしても、翌年同じお客様に購入していただくって結構ハードルが高いと感じてました。
販売時期が年に一回しかないうえに、そのタイミングは物凄く激務なので、過去の顧客リスト全員に「今年もどうですか」って連絡するのも大変ですよね。
なので、解約するまで毎年自動的に届けるサブスクモデルを作りましたが、これは大当たりだったと思います。
僕の場合は自分で食べるよりも取引先への贈り物として使ってたので、一番怖いのは「送り忘れ」でした。
お世話になっている取引先など毎年贈りたいところに、自動で発送してくれたら贈る側は安心ですよね。ここに潜在的なニーズがあると確信していたので、名畑さんにも自信を持って提案し、快く受け入れてくれたのを覚えています。
――「じゃがいものサブスク」は面白い取り組みですね。
冨田さん
固定客がいれば、年間の最低売り上げが確保できますからね。
また自分のためにではなく、贈り物需要で販売すると財布の紐が緩みやすいので、人に贈りたくなるようなアカウントを目指しました。
人に贈る時って新しい送付先に贈る場合もありますが、一定数は同じ贈り先が多いんじゃないかと思い、それなら毎年自動で発送されるようにしましょう!と提案しました。
――確かに農家に知り合いがいないと、じゃがいもの収穫時期や販売時期はわからないですよね。飲食店向けの施策はしなかったのでしょうか?
冨田さん
飲食店向けの施策はしていません。飲食店では品質の良いじゃがいもを仕入れても価格に反映しにくく、品質はもちろん、コスパを求めるニーズが多いので、戦うべきフィールドじゃないと判断しました。
例えば、ステーキの付け合わせでマッシュポテトのじゃがいものランクを上げたからといって、ステーキの価格はなかなか上げられないですよね。じゃがいもそのもので料理の値段を上げるのはすごく難しいと感じています。
ここらへんの感覚は、僕自身が長年飲食店を経営していた経験も役立ちました。
ブロック率はたったの8.3%
――配信頻度はどれくらいですか?
冨田さん
配信は月に1回、特にセグメントは分けずに一斉配信で送っています。
一般的なLINE公式アカウントでも、個人が送ってるような配信を意識されていると思いますが、1通も返信がこないケースも多いですよね。
一方でファームキムラの配信は、多くの返信をいただけています。
――素晴らしいですね。メッセージ文は何か工夫がされているのでしょうか?
冨田さん
テキストは改行や絵文字など、機械ではなく人らしさ、名畑さんらしさが出るような文章にしています。
これは、名畑さんの日常的な文章のクセや絵文字や改行の習慣を分析して、本人が書いているようなライティングになるよう人間臭さを意識しています。
綺麗な文章はいくらでも書けますが、ちょっと不器用でも、クライアントの人間味を伝えることを大切にしています。
農家さんからゴリゴリのセールスライティングが送られてきても引いちゃうかなって笑
――収穫から販売時期の配信も、何か工夫をされていますか?
冨田さん
収穫時期は、収穫用・販売に向けたシナリオを組んでいます。
じゃがいもの収穫が年に1回なので、前年の販売量を収穫終了までに予約販売することを目標に、年間の配信計画を立案しました。
動画なども活用して随時じゃがいもの生産過程や栽培状況を配信することで、見込み客の購買意欲を高めていく運用を目指しています。
――年間の配信計画を決めているんですね。
冨田さん
今回のアカウントでは、この年間配信計画の作成を重点施策として力を入れて取り組みました。やっていることはプロダクトローンチで、イメージとしては新作映画のプロモーションです。
映画は制作が決定したタイミングからPRが始まって、公開初日には行列ができている、この考え方をじゃがいもの販売にも活かしました。
「今年も雪が解けてきました」から情報発信を始めて、「雑草の草むしりをしてます」とか「葉っぱが生えてきました」といった内容で、じゃがいもが育っていくプロセスを見せることで見込み客の熱量を高めて、収穫ができる頃にはもう注文が殺到してる状態を作りたかったんです。
ほとんどの農家は収穫が完了してから「今年もできました、いかがですか」と宣伝してますが、 僕たちはプロセスを全て公開することで収穫時期には行列ができて、注文が殺到してる状態を目指しています。
今回の年間配信計画を作るにあたっては、名畑さんから1年間の作業リストを全部いただいて、その作業に合わせた写真や動画、テキストを一覧で作り込みました。
――ちなみにブロック率はどれくらいでしょうか?
冨田さん
ブロック率はとても低くて、現在で8.3%です。
――とても低いですね。情報取得のためのアンケートなどはやっていますか?
冨田さん
アンケートは友だち追加直後に、定期プランに興味があるかないかだけ聞いてます。
友だち追加直後
Googleビジネスプロフィールの評価は5.0を獲得
――Googleビジネスプロフィールは前から登録されていましたか?
冨田さん
Googleビジネスプロフィールも登録していなかったので、LINE公式アカウントと同時に作成することを提案しました。
発送作業終了後、一定期間を空けた後に購入者や受け取った方に対して、Googleビジネスプロフィールへの口コミ投稿依頼を行い、わずか半年で新規口コミが30件以上、評価は5.0を獲得しました。
――評価がとても高いですね。
冨田さん
僕もファームキムラの農作業を手伝わせてもらったことがありますが、農作業って本当に孤独で、外部の人と関わることがほとんどないんですよね。
だからファームキムラで働いてる人達に、自分たちの仕事を褒めてくれるようなお客様からのメッセージを見える化してあげたかった。仕事に誇りを持てるようなきっかけをたくさん作ってあげたいと思い、口コミ対策を行いました。
「じゃがいも美味しかったよ」と直接言われるのも嬉しいことですが、誰から見ても客観的にわかるところで、いい仕事をしてると評価をされるってすごく大事なことだと思っています。
会ったことも見たこともないような人達が、自分達が育てたじゃがいもを食べて、「すごく美味しかったです」とか書いてくれてるのを見たら、 名畑さんはじめ、パートで働いてる方も嬉しいんじゃないかなと思います。
――人と人とのつながりって大事ですよね。
冨田さん
そうですね。今回のアカウントのテーマが、じゃがいもを売るアカウントではなくて、じゃがいもを通じて人間関係を豊かにするアカウントです。
「贈る方へ」「もらった方へ」というクリエイティブを作り、贈った後やもらった後のイメージがしやすいように工夫しました。
結局、人って購入後のイメージができなかったら買ってくれないので、より鮮明にイメージできるように、リアリティのあるクリエイティブにしました。
絵に描いた餅で終わらせない「実行力」
――冨田さんの拠点はどちらですか?
冨田さん
会社は大阪府です。
――対応エリアは全国ですか?
冨田さん
はい、全国対応しています。
――得意とする業種・業態はありますか?
冨田さん
ハウスメーカーや不動産など単価の高い商品を取り扱う企業や、整形外科や美容外科などの自費診療の医療サービスで、特にリスティング広告などWeb広告を活用している企業を得意としています。
あとは、会計士や税理士のような契約期間が長い商品を扱っている事業者や、講師・著者など専門性の高い業種が得意です。
――構築後、運用まで担当するケースが多いですか?
冨田さん
基本的に構築単発の依頼は受けていなくて、コンサルティング契約とセットで受けています。
Lステップを構築してそのまま納品しても、きちんと運用できるクライアントは少ないので、基本的には継続的にお付き合いさせていただくクライアントが大半です。
――どういう経緯でご依頼がくるケースが多いですか?
冨田さん
既存クライアントのつながりで連絡いただくことが多いです。
クライアントの取引先の会計事務所からコンタクトがきたこともありました。当社に支払ってる領収書が会計事務所に届いた時に、当社に興味を持っていただいたようです。
僕がYouTubeチャンネルをやっているので、YouTubeなどのSNS経由やセミナー経由もあります。
――冨田さんのYouTubeチャンネルも好評ですよね。
冨田さん
ありがとうございます。やっぱり、クライアントとの生の声はとてもリアリティがあるので見込み客やクライアントからはもちろん、同業者の方々からも評価をいただいています。
――冨田さんの強みや、クライアントワークをする上で大切にしていることをお聞かせいただけますか。
冨田さん
強みは、絵に描いた餅で終わらせない実行力です。
クライアントワークでは、目先の利益に囚われず、クライアントと二人三脚でお客様から信頼を得られるようなマーケティング施策を提案し、実践し、成果をあげることで共に成長の喜びを分かち合える関係づくりを大切にしています。
まとめ
今回は株式会社ジャパンパシフィックマネージメント代表の冨田さんに、じゃがいも農家のLステップ導入事例をご紹介いただきました。
Lステップの構築だけでなく運用込みでご依頼したい方、二人三脚でしっかりと寄り添ってもらいたい方に、冨田さんはぴったりです。ご相談を希望される方は、以下のHPからご連絡してみてください。