人材獲得競争が激化し、従来型の採用活動だけでは優秀な人材の確保が難しくなっています。
そこで注目を集めているのが、マーケティングの考え方を採用活動に取り入れる「採用マーケティング」です。
この記事では、採用マーケティングの基本的な考え方から具体的な実践方法、さらにはLINEを活用した最新の事例までを解説します。
目次
採用マーケティングとは?
採用マーケティングとは、会社が欲しい人材を採用するためにマーケティングの考え方を使う方法です。
店舗がお客様に商品を買ってもらうための工夫を施すように、会社も求職者に自社のファンになってもらうための工夫をします。
採用マーケティングでは、求職者が以下の道筋をたどるように考えます。
- 会社を知る
- 興味を持つ
- 応募する
- 入社する
各段階で、求職者が「次のステップに進みたい」と思えるような情報を届け、順序立てて進めると、採用のミスマッチを防ぐ効果が期待できます。
採用ブランディングとの違い
「採用マーケティング」と「採用ブランディング」は似ているようで異なります。
採用ブランディングは、会社の魅力を伝えることが中心なのに対し、採用マーケティングは、実際に入社してもらうまでの全体を考えます。
具体的には、採用ブランディングは会社の魅力や方針を伝え、この会社で働きたいと思ってもらうことが目的です。
一方、採用マーケティングは、それに加えてどうやって応募してもらうか、どのように入社まで導くかまでを考えます。
採用マーケティングが必要な3つの背景
ここでは、採用マーケティングを今取り入れるべき背景を3つ紹介します。
時代や採用状況の変化を把握することで、効果的に人材を確保するポイントがわかります。
働く人が減っているから
日本では働く人の数が年々減っています。
リクルートワークス研究所の「大卒求人倍率調査(2025年卒)」によると、2025年度の民間企業の求人総数は79.7万人でした。
一方で、民間企業への就職を希望した学生は45.5万人にとどまり、34.2万人分の求人が求職者数を上回る結果となっています。
パーソル総合研究所によると、2030年には644万人も人手が足りなくなるとされており、今後も人手不足が続くことが予想されます。
会社が選ばれる時代になったから
転職のハードルが低くなり、求職者がニーズに合う会社を選びやすくなりました。
たとえば、以下の点を基準に選びます。
- やりがいのある仕事か
- 会社の雰囲気は良いか
- リモートワークは可能か
- 残業は多くないか
- プライベートと両立できるか
そのため、仕事内容や企業に勤めている人の人柄など、働くイメージを持てるように情報を伝えることが必要です。
入社前に企業への理解を深めると、入社後のミスマッチを防ぐことにもつながります。
新卒採用が早まっているから
新卒採用の開始時期は、着実に前倒しされています。
ディスコの「キャリタス就活2025 学生モニター調査結果」によると、2025年卒業予定の学生の5人に1人(43.2%)は、大学3年生で内定を獲得していました。
また、住友林業や富士通、TOTO、楽天グループ、メルカリなど、1年を通して採用している企業も増えています。
このため、従来通りの採用時期に合わせて広告を出す方法では、良い人材の確保が難しくなっています。早い段階から学生と関係を作り、長く交流を続けることが大切です。
採用マーケティングで得られる4つのメリット
採用マーケティングを取り入れて、得られるメリットは以下の4つです。
- 欲しい人材からの応募が増える
- 早期退職を防げる
- 採用コストを抑えられる
- 潜在的な求職者への認知が広がる
それぞれくわしく解説します。
欲しい人材からの応募が増える
自社の価値観や特徴を効果的に伝えると、理想とする人材からの応募が増えるメリットがあります。
たとえば、エンジニアを採用したい場合、社内で使用しているツールや仕事の進め方をブログで紹介したり、業界イベントで仕事の魅力を発信したりすると、スキルの高い人材の目に留まりやすくなります。
また、柔軟な働き方を取り入れている会社なら、在宅勤務や時短勤務の事例を発信することで、多様な働き方を求める人材に響くでしょう。
早期退職を防げる
入社前に会社の実態をくわしく伝えると、入社後のギャップを抑えられます。これにより、早期退職を防ぐ効果も期待できます。
具体的には、社員インタビューで仕事の魅力や課題を正直に伝えたり、職場の雰囲気を動画で紹介したりする方法が効果的です。
また、会社説明会では仕事の楽しさだけでなく、難しさや大変さも合わせて伝えると、入社後のミスマッチを減らせるでしょう。
採用コストを抑えられる
求める人材からの応募が増えれば、採用の成功率が向上します。この結果、長期的な採用コストを抑えることも可能です。
採用コストを抑えられる理由として、以下が挙げられます。
- ターゲット人材からの応募増加による採用効率の向上
- ミスマッチ防止による再採用コストの削減
- 効果測定による広告費の最適化
- 採用サイトやSNSコンテンツの再利用によるコスト削減
さらに、社員の生の声を集めた記事や会社の成長を伝える動画は、長期的に活用できるため、費用対効果の高い手法といえます。
潜在的な求職者への認知が広がる
継続的に情報を発信すると、企業の認知度が高まり、将来的な求職者へのアプローチが容易になります。
たとえば、社員の成長ストーリーの定期的な発信は、キャリアアップを目指す人材に注目されやすくなります。
また、会社の行事や日常の様子を発信すると、潜在的な応募者の関心を引けるでしょう。
こうした情報発信の継続で、いつか働きたいと思われる企業のポジションを築くと、採用市場での競争力を高められます。
新卒・中途別の採用マーケティング戦略
採用対象によって、求職者の行動特性や情報収集方法は大きく異なります。
効果的な採用マーケティングを実現するには、新卒採用と中途採用の特徴を理解したうえで、的確なアプローチの設計が必要です。
ここでは、採用対象ごとに効果的な手法を紹介します。
新卒採用マーケティングに効果的な手法
新卒採用では、共感と体験を軸にした長期的な関係構築が大切です。
学生の価値観が多様化し、単なる企業規模だけでなく、自分らしい働き方ができる会社を選ぶ傾向が強まっています。
具体的には、以下の施策が有効です。
- オンライン職場見学や1Day仕事体験などの気軽に参加できるイベントの開催
- 社員の成長ストーリーをTikTokやInstagramで発信
- 学生と若手社員がカジュアルに交流できるランチ会や座談会の実施
- 大学のキャリアセンターと連携した業界研究会の開催
重要なのは、就職活動前の早い段階からの接点作りです。
3年生の夏のインターンシップだけでなく、1・2年生向けの業界理解プログラムなど、段階的なアプローチを意識しましょう。
中途採用マーケティングに効果的な手法
中途採用では、仕事の専門性とキャリアビジョンを軸にした情報発信が重要です。
転職者は、給与や待遇だけでなく、より専門性を活かせる環境や将来のキャリアパスを重視する傾向が強まっています。
具体的な施策は以下です。
- 社内の専門家による仕事の進め方や専門知識の発信
- 業界向けセミナーでの講演や専門誌への寄稿
- SNSでの社員による仕事の様子の紹介
- 新しい働き方や業務改善の取り組み事例の共有
重要なのは、すでに転職を考えている人だけでなく、まだ転職を意識していない人材にもアプローチすることです。
そのほか、以下の新しい採用方法も効果的です。
- 副業からの正社員採用
- 業界勉強会の開催
中途採用では、専門性を重視した情報発信と新しい採用方法の掛け合わせが、優秀な人材確保の近道といえるでしょう。
採用マーケティングの進め方6ステップ
優秀な人材をスムーズに確保するためには、採用マーケティングの正しい進め方を知ることが重要です。ここでは、具体的な流れを6つのステップで紹介します。
- 自社の強みを見つける
- 採用ターゲットを決める
- カスタマージャーニーを設定する
- 効果的な発信方法を選ぶ
- 具体的な施策を実行する
- データで効果を確認して改善する
それぞれのポイントを見ていきましょう。
1.自社の強みを見つける
採用マーケティングの第一歩は、自社の魅力を正確に把握することです。まずは経営理念や事業内容を見直し、他社にはない強みを洗い出しましょう。
たとえば、以下の視点で特徴を整理すると分かりやすくなります。
- 企業文化や価値観
- 事業の特徴や将来性
- 職場環境や働き方
- 社員育成やキャリアアップの支援体制
- 給与体系や福利厚生
具体的に特徴を整理することで、求職者にアピールすべきポイントが明確になります。
後ほど紹介する各種フレームワークを活用すると、より体系的な分析が可能です。
2.採用ターゲットを決める
自社にとって理想の人材像を具体的に定めましょう。抽象的な表現に留めず、求めるスキルや価値観を掘り下げることが重要です。
たとえば「コミュニケーション能力が高い」だけでなく「お客様の課題を引き出し、解決策を提案できる人材」といった具合に具体化します。
さらに、その人材の価値観や行動パターンを掘り下げていくと、求人広告を出す場所や効果的なアプローチ方法を選びやすくなります。
明確なターゲット像を持つと、採用チーム全体で理想の人材のイメージを共有できる点もメリットです。
3.カスタマージャーニーを設定する
求職者が会社を知り、興味を持ち、応募を決めるまでの道筋を整理します。
たとえば、SNSで会社を知り、採用サイトで詳細を確認し、説明会で魅力を感じて応募に至るといった流れです。
採用プロセスの可視化により、各段階でどのような情報を提供すればよいかが見えてきます。
整理されたカスタマージャーニーは、効果的な採用施策を設計する土台となります。
4.効果的な発信方法を選ぶ
採用ターゲットが普段利用するメディアやチャネルを特定し、最適な発信方法を計画しましょう。
大切なのは、ターゲットの属性や行動パターンを考慮して、どのチャネルがもっとも効果的かを見極めることです。
たとえば、20代の若手人材がターゲットの場合、InstagramやTikTokといったSNSを重視する戦略が有効です。一方、専門職の場合はLinkedInや業界特化型のサイトが適しています。
採用サイトやSNS、会社説明会など、複数のチャネルで接点を作るのが基本です。チャネルごとの特性に合った発信で、求職者の関心を引きましょう。
5.具体的な施策を実行する
選定したチャネルを活用し、求職者が興味を持つコンテンツを発信しましょう。
たとえば、SNSでは、オフィスの雰囲気や社員の日常を紹介する写真・動画の投稿が効果的です。
採用サイトでは、具体的な仕事内容や先輩社員の体験談を掲載すると良いでしょう。
コンテンツは、社内で制作する場合もあれば、外部の専門家に依頼する方法もあります。予算やスケジュールに合わせて適した方法を選びましょう。
6.データで効果を確認して改善する
採用活動の成果を数値で確認し、次の施策に反映させましょう。
採用サイトのアクセス数や説明会の参加率、選考通過率などをチェックすると、現状の課題が明確になります。
さらに、どの情報が求職者に響いているのか、どの段階で多くの人が離脱しているのかを分析すると、具体的な改善策を立てられます。
分析結果をもとに施策を見直し、より効果的な採用マーケティングへとつなげましょう。
覚えるべき!採用マーケティングのフレームワーク3選
採用活動を戦略的に進めるために、役立つフレームワーク(考え方)を3つ紹介します。
フレームワークを活用して、採用活動をより効果的に進めましょう。
ペルソナ分析で理想の人材像を描く
ペルソナ分析とは、理想の人物を具体的に描き出す手法です。
年齢や経験年数などの基本情報に加え、たとえば「休日に技術書を読んで勉強している」「将来は管理職としてチーム運営を担いたい」といったライフスタイルや価値観もくわしく設定しましょう。
詳細な人物像を描くことで、採用チーム全体が理想の人材のイメージを共有できます。
その結果、ターゲットに響く募集要項を作成しやすくなり、効果的なPR施策を立案できるでしょう。
3C分析で採用市場を理解する
3C分析は、採用市場における自社のポジションを把握するための方法です。
以下の3つの視点から分析することで、効果的な採用戦略を立案できます。
分析の視点 | 主なチェックポイント | 具体例 |
Customer(求職者) |
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Competitor(競合) |
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Company(自社) |
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社員アンケートやカジュアル面談で得た求職者の声を分析に活かし、自社の強みをさらに磨いていく方法も有効です。
5A理論で応募を促進する
5A理論は、求職者の応募検討プロセスを5段階に分け、それぞれの段階で適切な施策を展開する考え方です。
各段階に合わせた適切な施策を展開し、応募率の向上を目指します。
順序 | 段階 | 求職者の状態 | 効果的な施策例 |
① | Aware(認知) | 会社の存在を知る |
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② | Appeal(関心) | 興味や共感を持つ |
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③ | Ask(検討) | くわしい情報を集める |
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④ | Act(行動) | 実際に応募する |
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⑤ | Advocate(推奨) | 他者に推薦する |
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とくに求職者が離脱しやすい段階を重点的に分析して改善することで、採用活動の効率を向上させられます。
採用マーケティングにはLINEの活用がおすすめ
採用マーケティングを効果的に進めるには、国内月間利用者数が9,700万人(2024年3月末時点)を超えるLINEの活用がおすすめです。
企業向けのビジネスアカウント「LINE公式アカウント」の開設で、友だち追加してくれたユーザーに対して情報発信できます。
QRコードの読み込みやURLのクリックだけで友だち追加ができ、メールアドレスなどの入力が不要なため、求職者の初期離脱を防げます。
さらに、LINEはメッセージの開封率が約60%と高いことも利点です。※自社調べ
企業の活用例としては、説明会情報の配信、選考プロセスの案内、内定者フォローなどが挙げられます。
実際に日本生命やニトリでは、新卒向けのLINE公式アカウントを開設し、採用活動を行っています。
とくに若手人材の採用では、日常的に使用するLINEを通じたコミュニケーションが、親近感の醸成につながるでしょう。
Lステップを活用した採用マーケティングの成功事例
LINEを活用した採用マーケティングをさらに強化するなら、LINE公式アカウント専用の拡張ツール「Lステップ」が便利です。
ここでは、Lステップの活用で採用に成功した事例や、Lステップの活用例を紹介します。
採用業務の工数を5分の1に激減!イベント会社
イベント企画・運営を手がける「株式会社ライドエンターテイメント」は、LINEを活用したアルバイト採用に課題を抱えていました。
参加希望者の確認や個人情報の収集に多くの時間を要し、採用担当者が1日中対応に追われていたのです。
Lステップを導入したことで、以下の改善が実現しました。
- 個人情報登録フォームを自動送信し、情報取得を完全自動化
- 求人情報の一斉配信
- ボタン形式のアンケートで参加希望者を簡単に把握
- タグ機能で採用者・不採用者に一括連絡
- 年末調整用の個人情報を自動収集
その結果、採用業務の工数は5分の1まで削減され、特定の担当者への業務集中も解消されました。
ダイレクト採用を実現!内科クリニック
「そのだ内科糖尿病・甲状腺クリニック」では、医療機関での採用課題をLステップで解消しています。
開院前からLINEを活用し、クリニックに興味を持つ求職者と直接コミュニケーションを取るしくみを構築しました。
これにより、求人サイトや人材紹介会社を使わずに、LINE経由でのダイレクト採用を実現しています。
さらにSNSでクリニックの魅力を発信し、共感した求職者がLINEに登録する流れを確立。
採用コストを削減し、クリニックの理念に共感する人材を効率よく採用できるようになりました。
LINEで10名超の新卒を採用!リノベーション会社
リノベーション会社「ecohouse(エコハウス)」は、Lステップを活用して効率的な採用活動を展開しています。
大手求人サイトでの採用実績は、227名の応募者に対し内定者2名(0.9%)でしたが、LINE経由では118名の応募者から11名(9.3%)が内定に至りました。
その鍵となったのがLINEを使った工夫です。
説明会申込者に対し、以下のようなコンテンツを自動配信しました。
- 社長の動画メッセージ
- 社員の年齢や血液型分布の紹介
- 説明会で提供される弁当の写真
結果、説明会のキャンセル率が85%から42%に低下し、採用担当者の工数も削減しています。
また、LINE公式アカウントやLステップの月額利用料だけで運用できるため、求人サイト掲載料と比べて採用コストも削減できました。
Lキャストとの連携で説明会や研修を自動化しよう
「L-CAST(Lキャスト)」は、LINE専用のオートウェビナーマーケティングツールです。
事前に録画した説明会や研修をオンラインで自動配信できる、いわゆるオートウェビナー(自動化されたウェビナー)を簡単に実施できる点が特徴です。
このツールは、LINE公式アカウントの機能を拡張できるマーケティングツール「Lステップ」との連携により利用可能で、手間をかけずにオンラインセミナーを実施できます。
LキャストとLステップを組み合わせ、会社説明会の申し込みページ作成からリマインド配信、当日の運営、参加後のフォローに至るまで、採用イベントの一連の流れを自動化できます。
とくに学生の利用率が高いLINEを活用することで、応募者が気軽に参加できる環境を整えられる点が大きな魅力です。
研修に活用する場合、誰がどの動画をどれだけ視聴したかを把握できるため、進捗確認に役立ちます。
さらに、研修動画の内容に沿った問題をLステップの回答フォームで作成し、視聴後に回答してもらう方法を組み合わせることで、理解度を測ることも可能です。
これにより、採用活動や研修全体の効率化を実現しながら、応募者や社員との良好な関係を築けます。
Lステップを使って入社後の研修を自動化した事例については、こちらをご覧ください。
採用マーケティングで理想の人材と出会おう
採用マーケティングは、企業の魅力を効果的に発信し、求める人材との出会いを戦略的に創出する手法です。
自社の強みを明確にし、ターゲットとなる人材像を具体的に設定することで、効率的な採用活動が可能になります。
さらに、LINEなどのツールの活用で、採用業務の効率化と応募者とのコミュニケーション強化も実現できます。
時代の変化に合わせた採用手法を取り入れ、理想の人材との出会いを叶えましょう。