採用ミスマッチは、企業の成長を妨げる大きな課題です。
令和3年に厚生労働省が発表した調査によると、新卒の3年以内での離職率は高卒で約36.9%、大卒で31.2%に達しており、多くの企業が早期離職への対策を求められています。
本記事では、採用ミスマッチが起こる原因と、それを防ぐための具体的な対策について解説します。
目次
採用ミスマッチとは?
採用ミスマッチとは、企業と求職者の間に認識のズレが生じ、結果として早期離職やモチベーション低下につながる状態を指します。
認識のズレとしては、具体的に以下が挙げられます。
- 求人情報と実際の業務内容
- 企業の価値観と実際の職場環境
- 労働条件や仕事の難易度
- 求める人材像と採用した人材の能力
これらが原因となり、生産性の悪化を引き起こす可能性も高まります。
早期離職率と転職希望率の現状
令和3年に厚生労働省が発表した調査では、約3人に1人が早期に企業を去っていることがわかりました。
さらに令和5年の調査では、全体的な離職率は15.4%で、100人の企業であれば年間で約15人が退職する計算になります。
また、総務省の調査によれば、2023年の転職希望者数は1,000万人を超え、過去最多を記録。これらのデータから、労働市場における流動性の高さがうかがえます。
採用ミスマッチが引き起こす3つの問題点
採用ミスマッチは企業の持続的な成長を妨げる要因となります。
具体的には、以下の3つの問題が挙げられます。
- 内定辞退者や早期離職者が増える
- 企業のイメージが悪くなる
- 採用コストやオペレーションコストの損失が出る
順に解説します。
内定辞退者や早期離職者が増える
採用の段階で企業と求職者の間でズレが生じると、内定辞退者が増える可能性があります。
また、入社後にギャップを感じた結果、短期間でも退職の判断をすることは少なくありません。
こうした状況は、再度採用活動が必要になり、既存社員への業務負担も増加する恐れがあります。
とくに、人材不足が深刻化するなかでの早期離職は企業に大きな影響を及ぼすでしょう。
企業のイメージが悪くなる
早期離職が多い企業は、口コミサイトやSNSでネガティブな評価を受けやすくなります。
これが企業のブランドイメージを損ない、将来的な人材確保を難しくする要因ともなり得ます。
とくに若年層は口コミの影響が大きく、評判の悪化が採用活動全般に及ぼすダメージは無視できません。
採用コストやオペレーションコストの損失が出る
採用ミスマッチは、企業に直接的なコストの損失をもたらします。
株式会社マイナビの「マイナビ2024年卒企業新卒内定状況調査」によると、新卒社員ひとりの採用には平均56.8万円(2024年卒)。株式会社リクルートの「就職白書2020」では、中途社員は約103.3万円のコストがかかるとされています(2020年卒)。
早期離職が発生すれば、これらのコストが無駄になるだけでなく、再採用や補充のための追加コストも必要です。
さまざまな費用の発生は、企業の収益性や安定した運営にも悪影響を及ぼすでしょう。
採用ミスマッチが起こる5つの理由
企業の採用活動において、ミスマッチは避けるべき重要な課題ですが、さまざまな要因が絡み合い、完全な対策は難しいのが現状です。
ここでは、採用ミスマッチが発生する5つの理由を解説します。
求職者に伝える情報が少ない
企業と求職者の認識の差を生む大きな要因は、情報開示の不足です。
多くの企業は給与や勤務時間などの基本条件は提示するものの、具体的な残業時間や研修制度などの情報が十分ではありません。
とくに重要なのは、実際の職場の雰囲気や日常業務の様子、社内コミュニケーションの特徴といった情報です。
このような情報が不足すると、求職者は実際の働くイメージを掴みにくく、入社後に現実とのギャップを感じやすくなります。
人間関係が合わなかった
職場での人間関係は、仕事の満足度を左右する重要な要素です。
しかし、面接だけでは職場の本当の人間関係や雰囲気を把握することは困難です。
とくに上司のマネジメントスタイルや同僚との価値観の違い、世代間のコミュニケーションギャップなどは、入社前には見えづらい要因となっています。
実際に、多くの離職理由として「職場の人間関係」が挙げられるのは、これらの見えない部分でのミスマッチが原因です。
ありのままの仕事内容を伝えていない
求人情報では、業務内容が理想的に描かれがちという問題があります。
やりがいのある業務や魅力的な仕事内容が強調される一方で、実際には単調な作業や困難な課題も含まれているのが現実です。
たとえば「企画業務」と募集していても、実際は資料作成やデータ入力などの定型業務が大半を占めるケースも少なくありません。
このように、業務実態と求人情報の間にあるギャップが、入社後の失望や早期離職につながっています。
入社後のフォロー体制が整っていない
新入社員が職場に定着し、スムーズに活躍するためには、入社後のサポート体制が欠かせません。
しかし、多くの企業では体系的な研修プログラムやメンター制度が不十分な状態です。
その結果、新入社員の業務スキルの習得が遅れたり、職場環境に馴染めなかったりするケースが発生します。
とくに、精神的なケアや悩み相談の体制が整っていない企業では、新入社員が孤立感を抱き、早期離職につながるリスクが高まります。
面接方法や評価基準があいまいである
採用面接における評価基準のあいまいさも、適切な人材選考を妨げる要因のひとつです。
面接時のテンプレートの質問項目が決まっていても、面接官によって伝え方やコミュニケーションの取り方が異なり、求職者に与える印象は変わります。
また、面接官の感じ方にも差異があり、コミュニケーション能力の基準ひとつとっても、定義や評価方法の統一は困難です。
このような評価基準の不明確さも、求める人材像とのミスマッチを引き起こします。
【入社前】採用ミスマッチの対策5選
採用ミスマッチを防ぐには、入社前の段階での対策が必要です。
企業と求職者の双方が十分な理解を得られるよう、以下の5つの対策を実施すると、ミスマッチのリスクを低減できます。
- 会社の情報をしっかり伝える
- お試し勤務(インターン)や職場見学を取り入れる
- 適性検査を活用する
- 評価の基準を明確にして複数人で面接する
- リファラル採用を検討する
それぞれの対策について、具体的な実施方法や効果を解説していきます。
会社の情報をしっかり伝える
採用ミスマッチを防ぐ第一歩は、企業情報の徹底的な開示です。
具体的には、給与や勤務条件といった基本情報に加え、以下の情報を発信しましょう。
- 社内の雰囲気
- 求めるスキルレベル
- 困難だと感じる仕事内容
- 福利厚生面などの諸条件
- 求職者のメリットやデメリット
たとえば、社員インタビューや1日の業務の流れを動画で紹介したり、社内イベントの様子をSNSで発信したりすると、より実態に近い企業像を伝えられます。
ありのままの情報開示で、求職者の正確な判断材料を与えることで、入社後のギャップを軽減しましょう。
お試し勤務(インターン)や職場見学を取り入れる
実際の職場環境を体感できる機会を設けることは、双方にとって有効な対策です。
1日〜2週間程度のインターンシップや職場見学を通じて、求職者は実際の業務内容や職場の雰囲気を直接確認できます。
同時に、企業側も応募者の適性や能力を実務の中で評価できるため、より正確なマッチングが可能です。
チームメンバーとの相性や仕事に取り組む姿勢など、面接だけでは判断しづらい要素を確認できる点もメリットといえるでしょう。
適性検査を活用する
採用する過程に適性検査を導入すると、より客観的に性格特性や思考傾向、ストレス耐性などを科学的に分析でき、企業との適合性を判断できます。
適性テストにはさまざまな種類がありますが、代表的なのは以下の3つです。
SPI3 |
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玉手箱 |
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内田クレペリン検査 |
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それぞれの適性検査には異なる特徴があるため、自社に合ったものを選びましょう。
評価の基準を明確にして複数人で面接する
面接における評価の質を高めるため、明確な基準設定と複数人での評価が効果的です。
以下のような具体的な評価項目を設定し、判断基準を数値化すると、より客観的に評価できます。
- 問題解決力
- チームワーク力
- 専門スキル
また、異なる部署や役職の面接官による面談を実施すれば、多角的な視点で評価でき、個人の主観に偏らない採用が行えます。
リファラル採用を検討する
社員の紹介での採用(リファラル採用)は、既存社員が職場環境や業務内容を知ったうえで候補者を推薦するため、ミスマッチのリスクを低減できます。
紹介する社員は、職場の実態や求められる能力を理解しており、適切な人材を推薦できます。
また、紹介された候補者も、知人から直接情報を得ることで、現実的な期待値を持って入社するでしょう。
さらに、リファラル採用を取り入れると、採用コストの削減につながる点も魅力です。
【入社後】採用ミスマッチの対策4選
入社後のフォロー体制も、採用ミスマッチを防ぐ大切な要素です。
企業と従業員の双方が良好な関係を築けるよう、以下の4つの対策を実施すると、ミスマッチによる離職リスクを低減できます。
- 先輩社員のメンタルサポートを取り入れる
- 定期的な面談を実施する
- 働きやすい環境を目指す
- キャリアプランを共有する
それぞれの対策の実施方法や効果を解説します。
先輩社員のメンタルサポートを取り入れる
メンター制度は、新入社員のスムーズな職場適応を支援するもので、採用ミスマッチ対策に有効です。
具体的には、入社2〜3年目の先輩社員をメンターとして配置し、定期的な相談時間を設けると、業務上の疑問や職場での悩みに迅速に対応できる体制を整えられます。
たとえば、週1回のランチミーティングを設定したり、社内チャットツールでの日常的な相談対応を可能にしたりするのも良いでしょう。
また、メンターと新入社員の相性も考慮し、必要に応じて柔軟に組み合わせを変更できる体制を整えることで、より効果的なサポートが実現できます。
定期的な面談を実施する
上司との1on1ミーティングは、新入社員の成長支援と課題の早期発見に効果的な取り組みです。
毎月、もしくは四半期ごとの定期面談に加え、入社後3か月、6か月などの節目でも面談を実施しましょう。
面談では業務の質や量、人間関係、今後のキャリアビジョンなど、包括的な状況把握を心がけると心理状態やモチベーションを理解しやすくなります。
面談記録を残して継続的な成長支援に活用することで、より効果的なフォローアップが可能です。
働きやすい環境を目指す
社員の定着率向上には、物理的・心理的な両面での働きやすさの実現が不可欠です。
効果的な環境整備では、以下の要素に注目しましょう。
- 柔軟な勤務制度(フレックスやリモートワークなど)
- 休暇取得の促進施策
- オフィス環境の整備
- コミュニケーション活性化のしくみ作り
- 心理的安全性の確保
たとえば、四半期ごとの従業員満足度調査を実施し、その結果に基づいて具体的な改善施策を実行すると、社員の声を反映した働きやすい環境づくりが進められます。
定期的なフィードバックと改善の繰り返しにより、社員一人ひとりが大切にされていると実感できる職場環境を目指しましょう。
キャリアプランを共有する
長期的な定着を促進するには、個々の社員の成長とキャリア実現を支援する体制が重要です。
効果的なキャリアプラン支援には、以下が有効です。
- 職種別キャリアパスの明確化
- スキルマップの提示
- 研修制度の体系化
- 昇進・昇格基準の透明化
具体的には、入社時にキャリアの方向性を確認し、四半期ごとの目標設定と振り返りを通じて、着実なスキルアップとキャリア形成をサポートします。
また、年に1回程度で、会社の期待と個人の希望のすり合わせを行うことで、効果的なキャリア支援が可能です。
採用ミスマッチを防ぐにはLINEの活用がおすすめ
採用ミスマッチを防ぐ効果的な方法として、LINEの活用がおすすめです。国内月間利用者数が9,700万人(2024年3月末時点)を誇るLINEは、求職者との円滑なコミュニケーションを実現するツールです。
企業向けのビジネスアカウント「LINE公式アカウント」を開設することで、求職者とのつながりがこれまで以上に身近なものとなります。
とくに注目したいのは、以下の3つのメリットです。
- QRコードやURLからできる手軽な友だち登録
- 身近なコミュニケーションツールならではの開封率の良さ
- メッセージ一斉配信による運用負荷の削減
これらの特徴を活かし、企業は社内の日常風景や社員の活き活きとした姿、イベントの様子などをタイムリーに求職者に届けられます。
従来のメールや電話とは異なり、より自然な形で求職者とのコミュニケーションを築けるため、お互いの理解を深めることが可能です。
また、メッセージの一斉配信機能を活用すれば、情報発信にかかる時間と手間を大幅に削減できます。
これにより、人事担当者が採用後のフォローアップに力を入れやすくなる効果も期待できます。
Lステップの活用で採用ミスマッチを防ぐ事例紹介
LINEの活用で採用ミスマッチを防ぐなら、LINE公式アカウント専用の拡張ツール「Lステップ」が便利です。
ここでは、Lステップの活用で採用に成功した事例や、Lステップの活用例を紹介します。
2日に1回会社の雰囲気を伝える配信設定をした事例
リノベーション会社「ecohouse(エコハウス)」では、「求人サイトに載ってないような情報をLINEで届ける」をコンセプトに、2日に1回の定期配信を実施しています。
エコハウスの会社情報やサクッと読める先輩インタビューのほか、社員の血液型分布図や、年齢・男女比・出身地の分布などのちょっと変わった配信もしています。
このように会社の雰囲気をリアルに伝えることで、求職者との相性を事前に確認しています。
また、配信内のリンクのタップの有無を記録し、ファネル分析を活用して熱意のある求職者がわかるようにしました。
面談などの受け答えだけでなく、さまざまな角度から会社への熱意を図ることで、採用ミスマッチのリスクを軽減しています。
入社後のイメージが膨らむコンテンツを提供した事例
廣瀬製紙株式会社の取締役でもあり、WEB採用シニアエキスパートの馬醫光明様は、LINEの友だち追加後、最初の5日間で段階的なシナリオ配信を実施しています。
シナリオ配信とは、あらかじめ用意しておいたメッセージを指定した順に自動で配信する機能です。
順序立てて以下のような内容を配信することで、求職者が入社後のイメージを持てるしくみを作りました。
- よくある質問
- 選考ステップ
- エントリー
- VR工場見学
- YouTube動画コンテンツ
この取り組みにより、志望度の高い求職者の応募が増え、マッチング度の向上にもつながっています。
個別の理解度に合った新人フォローを実現した事例
「医療法人社団ミライエ 緑町診療所」では、新人スタッフ向けにLINE上で教育用マニュアルを提供しています。
各動画にミニテストを付けることで、スタッフの理解度を可視化し、学習のつまずきポイントを把握。
このしくみにより、研修時間を大幅に短縮し、現場でのフォローが効率的に行えています。
手軽に利用できるLINEを活用し、入社後のフォロー体制を充実させることで、採用後のミスマッチによる早期離職を防いでいます。
L-CAST(Lキャスト)なら採用業務を自動化しミスマッチを防げる
「Lキャスト」は、LINE専用のオートウェビナーマーケティングツールです。
事前に録画した説明会や研修をオンラインで自動配信できる、いわゆるオートウェビナー(自動化されたウェビナー)を簡単に実施できる点が特徴です。
このツールは、「Lステップ」との連携により利用可能で、手間をかけずにオンライン会社説明会を実施できます。
LキャストとLステップを組み合わせ、会社説明会の申し込みページ作成からリマインド配信、当日の運営、参加後のフォローに至るまで、採用イベントの一連の流れを自動化できます。
とくに学生の利用率が高いLINEを活用することで、応募者が気軽に参加できる環境を整えられる点が大きな魅力です。
研修に活用する場合、誰がどの動画をどれだけ視聴したかを把握でき、進捗確認が容易になります。
さらに、研修動画の内容に応じたミニテストをLステップの回答フォームで作成し、視聴後に回答してもらうしくみを組み合わせると、個々の理解度の把握も可能です。
このような便利なツールの活用で採用活動や研修を効率化し、応募者や社員との信頼関係を深めて採用ミスマッチを防ぎましょう。
【まとめ】採用ミスマッチを防いで効果的な人材確保をしよう
採用ミスマッチを防ぐには、入社前に企業と求職者の相互理解を深めることが大切です。
また、入社後のメンター制度や定期面談などのサポート体制を整えることで、新入社員の不安を軽減し、職場への適応を促せます。
さらに、LINEやLステップ、Lキャストといった効率化できるツールを活用すれば、工数を削減しながら本当に必要な施策に力を入れることが可能です。
これらの施策を通じて、人材の定着率を向上させ、企業の持続的な成長を目指しましょう。