
矢野経済研究所の調査によると、不動産テック市場は2022年時点で9,402億円。2030年には約2.5倍に拡大すると予測されています。
IT重説の導入や電子契約の解禁など、デジタル化が進む不動産業界。旧式なアプローチを続けていては、いずれ競合に埋もれてしまいます。一方で、

- ITツールを導入したいけど、何を使えばいいのかわからない
- 手っ取り早く取り入れられるツールを知りたい
- 業務が忙しくてデジタル化が進まない
このように悩まれている方もいるのではないでしょうか。
そこでおすすめしたいのが、LINEのビジネス用サービス、LINE公式アカウントです。
今回は、LINEを利用するメリットやLINE公式アカウントの活用法、不動産業界における成功事例を解説します。
目次
不動産会社がLINEでやりとりをするメリット
LINEを活用するメリットから解説します。
ユーザー層に偏りがない
LINEの月間アクティブユーザー数は、2025年3月末時点で9,800万人。10代から60代まで、幅広い年代が利用するコミュニケーションアプリです。
特に不動産業界では、さまざまな顧客と接点を持つ必要があるため、LINEの活用でリーチできる範囲が広がります。
また、ユーザーの地域にも偏りがないため、いわゆる「街の不動産」にとっても、大きなアドバンテージとなるでしょう。
メッセージが読まれやすい
不動産の場合、顧客がポータルサイトから物件情報を一括請求し、その後各社がメールで返信をする流れが一般的です。
しかし上記のフローでは、メッセージが迷惑メールに分類されるリスクも高く、タイミングによっては競合に先を越される可能性も否めません。
また、たとえ優良物件を掲載していたとしても、大手のブランドイメージや広告費に流され、見込み客を取りこぼしてしまうケースもザラでしょう。
一方、LINEはプッシュ通知やチャットでの即時対応が可能なため、情報の見逃しを抑えられます。
1度顧客リストとして囲い込めば、ブロックされない限り、長期的に直接やり取りを行えるのも利点です。
専用アプリがいらない
物件検索や専用の管理アプリなど、近年は不動産系アプリが数多く提供されています。
一見すると便利なようにも思われますが、新たにアプリをダウンロードしてもらうのは、一部の顧客にとって負担になるのも事実です。
その点、LINEは多くの顧客が日常的に利用しているため、専用アプリを取得してもらう手間を削減できます。
使い方によっては、LINE公式アカウントを自社アプリのように利用できるため、コストカットにも効果的です。
コミュニケーションが円滑になる
不動産のような高額サービスの場合、問い合わせにハードルの高さを感じる顧客も少なくありません。
LINEであれば、普段使い慣れているツールで気軽にやり取りができるため、心理的な負担を軽減できます。
またアットホームの調査によると、賃貸契約者が希望するコミュニケーションツールとして、電話に続き「LINE」が次位。
問い合わせだけでなく、契約後の連絡手段としてもLINEは有益と言えそうです。
コスト削減につながる
チラシやDMなど、いまだにアナログな手法を利用している事業者も多いのではないでしょうか。
LINEを活用すれば、物件案内や新着のお知らせなど、さまざまな情報をデジタル化できるため、印刷費や郵送費をカットできます。
また、契約書類をPDFとして集約できるので、顧客側の利便性が高まるのも利点です。
業務の効率化によりスタッフの労力も軽減されるため、全社的なパフォーマンスの向上にも寄与します。
不動産会社のLINE公式アカウント活用法5選
LINE公式アカウントの特徴と、具体的な活用例を5つ解説します。
情報発信の効率化
LINE公式アカウントは、友だちと個別にやり取りができるLINEチャットの他、メッセージの一斉配信や、配信先の条件を絞り込めるセグメント配信が特徴です。
例えば、一斉配信ではキャンペーンや新着物件の案内を提供し、個別チャットでは詳細なヒアリングを行う、などの使い分けが考えられます。
セグメントに指定できる条件はいくつかありますが、代表的な例としてはチャットタグの活用でしょう。
タグとは、顧客の属性や状態など、特定の項目でラベリングする機能です。
「都内在住」「3ヶ月以内に入居希望」など、任意で作成したタグを付与できるため、一斉配信よりも精度の高い訴求を行えます。
予約の受付
LINE内に予約への導線を設置しておけば、受付工数を削減できます。LINE公式アカウントで予約を受け付ける場合、
- チャットで個別に予約受付
- 外部の予約システムに誘導
- 専用の拡張ツールの導入
などが一般的。
ちなみにLINE公式アカウントにも、「LINEで予約」と呼ばれる機能が存在しますが、利用できるのは飲食店に限られますので、ご注意ください。
情報の一元化
LINE公式アカウントのリッチメニューを使えば、必要な情報をLINE内に集約できます。リッチメニューとは、トーク画面下部に表示される固定メニューです。
各ボタンには、それぞれ異なるアクションを設定できるため、
Aボタン:ホームページへ遷移
Bボタン:よくある質問を表示
など、複数の情報を一元化できるのがメリット。
また「内覧予約」といったボタンを設置し、外部の予約フォームに誘導する流れも定番です。
お問い合わせ対応の自動化
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の調査によると、不動産会社に満足した点として、「レスポンスの早さ」が最多となっています。
しかし繁忙期ともなると、顧客や同業者からのお問い合わせが急増し、返信が遅れるケースも少なくないでしょう。
LINE公式アカウントの応答メッセージを活用すれば、定型的なお問い合わせ対応を自動化できます。
応答メッセージとは「定休日」など、特定のキーワードをあらかじめ設定しておき、一致するワードが送られた際に自動でメッセージを返信する機能です。
上記に加え、レインズやATBB※にQRコードを設置し、LINE経由での問い合わせを誘導すれば、同業からの電話対応を軽減できます。
※不動産業者専用の情報サイト
物件情報の視覚的な訴求
RSCの調査では、不動産会社を選ぶ時のポイントは「写真の点数が多い」がトップ。
LINE公式アカウントでは、テキストや画像を組み合わせた配信ができるので、視覚的なアプローチにも効果的です。
【リッチメッセージ】
引用:カードタイプメッセージ - LINEヤフーマーケティングキャンパス
画像にはリンクやクーポンも設定できるので、ユーザーからの連鎖的なアクションを誘発できます。
不動産会社がLINE公式アカウントを活用する手順
LINE公式アカウントを活用する手順を解説します。
LINE公式アカウントを開設する
LINE公式アカウントの開設がまだの方は、公式サイトにアクセスし「LINE公式アカウントをはじめる」をクリックしましょう。
なお、LINE公式アカウントには、3つのプランが用意されています。操作に不安がある方は、まずは無料のコミュニケーションプランからはじめてみてはいかがでしょうか。
詳しいプランの違いや開設方法は、以下記事をご確認ください。
友だちを集める
アカウントを開設した後は、見込み客に友だち追加をしてもらう導線が必要です。
一例としては、店舗や内覧会での声かけ、名刺やチラシへのQRコード設置などが挙げられます。なるべく間口を広げた上で、
- LINE登録で未公開物件をご案内
- QUOカード〇〇円分プレゼント
といった、魅力的なオファーを用意すれば、集客力の向上が見込めるはずです。
有益な情報を配信する
一定数の友だちが集まった後は、価値ある情報を提供し、長期的な関係を築きましょう。
弊社の調査では、ユーザーが期待する配信内容として「オトクな情報」が最多です。
「契約手数料オフ」のように、クーポンを配布するのも有効ですが、設備のメンテナンス方法やエリアの価格相場など、お役立ち情報を配信するのもひとつの手段です。
またステップ配信と呼ばれる、あらかじめ用意したメッセージを指定した順に配信する機能を使えば、以下のような流れを構築できます。
友だち追加翌日:アンケート案内
2日後 :物件情報の提供
3日後 :クーポンの配信
段階的に教育ができるので、自然な流れでセールスを行えるのが魅力です。
LINE公式アカウントを使った不動産会社の成功事例
LINE公式アカウントを使った、不動産会社の成功事例をご紹介します。
LINEチャットの活用で成約数が40件増加した不動産会社
「お部屋探しのハートサポート」は、LINE公式アカウントを活用し、申し込みから入居までの流れを仕組み化しています。
具体的には、動画投稿サイトでコンテンツを配信し、見込み客を自社アカウントへ誘導。その後はチャット機能を利用して、詳細なヒアリングを行う設計です。
引用:申し込みから入居までLINEで完結! ユーザーファーストな不動産仲介
LINE上ですべてが完結する手軽さが評判となり、LINE経由の問い合わせから30〜40件の成約につながっています。
ステップ配信でCPCが6割改善された不動産情報サイト
LINE公式アカウントは、ポータルサイト運営にも広く利用されているツールです。
不動産情報サイト「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」は、コミュニケーションの活性化を目的に、LINE公式アカウントを導入しました。
月に4回配信していたメッセージをステップ配信に変更し、業務効率化につなげています。
引用:「ステップ配信」でCPC6割改善・運用工数1/4にまで削減!LIFULL HOME'Sが気づいたメッセージ配信の最適なタイミングとは
また、2つのシナリオパターンを作成し、タップ率を比較・検証。最適なタイミングで情報提供を行った結果、CPC(クリック単価)が6割改善されたようです。
顧客に合わせた配信で予約数が増加した売買業者
売買の仲介をされている不動産会社の事例です。
同社はLINE公式アカウントを導入していたものの、同一アカウント内に複数の取引先が混在しており、ユーザーに合わせた配信ができていませんでした。
そこで、LINE公式アカウント専用の拡張ツール「Lステップ」を導入し、初回アンケートで顧客情報を取得。
以降は、属性に応じたシナリオ配信や予約導線を設計し、業務を半自動化しています。
ニーズに適したアプローチを行った結果、工数を抑えながらも個別相談への申し込みが取れるようになったようです。
また、ポータルサイトに広告を出稿し、LINE経由で内覧会の誘導を行ったところ、即座に15組ほどの予約が殺到。同物件は競争率が高まり、販売価格が100万円上昇しています。
友だちの35%が個別面談につながった賃貸業者
「コミコミ不動産」は、新規参入によるリソース不足の打開策として、LINE公式アカウント、およびLステップを導入しました。
同社は、診断形式のアンケートやカレンダー予約機能を活用し、予約の導線から当日までのリマインドを自動化しています。
予約までのコミュニケーションを最適化した結果、友だち追加したユーザーのうち、約35%が個別相談へとつながったようです。
予約機能やリマインダ配信、診断コンテンツの活用など、Lステップならではの機能を利用した好事例と言えるでしょう。
不動産会社がLINEでやりとりする際の注意点
注意点や気を付けておきたいポイントを解説します。
競合との差別化が必要になる
国土交通省の調査によると、宅建士の数は10年連続で増加傾向です。
一方帝国データバンクの発表では、2023年の不動産仲介会社の倒産率は過去最多。このような企業淘汰に加えて、
など、大手がLINEを活用する中、個人や小規模事業者が自社のアカウントを選んでもらうのは至難です。そのため、ただLINEを活用するだけでは、目ぼしい成果は見込めません。
差別化を進める上でポイントとなるのが、顧客1人ひとりに合わせた、パーソナライズな情報発信です。
友だちそれぞれのニーズを細分化し、大手には難しい顧客に寄り添った情報配信が、ファン化促進の一助となり得ます。
顧客管理が煩雑になる場合もある
LINE公式アカウントは、情報発信に強みを持ちますが、顧客管理には不向きです。
例えば、友だちに対してリサーチ(アンケート)を実施できますが、回答とユーザー情報が紐づかない仕様となっています。
そのため、手動でのタグ付けや、チャットルームにメモを残せる「ノート」を活用し、個別に管理しなければいけません。
また、2025年3月5日以降は「チャットProオプション」と呼ばれる有料サービスのリリースにより、チャット機能に大幅な制限がかかりました。
<チャットProオプションリリース後の基本機能(無料)>
- チャットタグの作成数:200個から5個に減少
- タグの付与数※ :10個から1個に減少
- ノートの作成数※ :10,000件から1件に減少
※各チャットルーム(1人あたり)単位
実務レベルで考えた場合、有料オプションへの加入は必須と言えるかもしれません。
配信手段を使い分ける
LINEが優秀な配信手段なのは間違いないですが、偏りすぎるのも禁物です。
GMOの調査では、不動産オーナーが経営に活用したいコミュニケーションツールとして、「メール」が首位。
また、大東建託の子会社であるハウスコムの調査によると、若年層の部屋選びの手段として、YouTubeやTikTokが主流になりつつあるようです。
上記のように、オーナーや一般顧客、デベロッパーや管理会社など、取引先ごとに最適な配信手段は異なります。
手堅くビジネスを進めるのであれば、LINE・メール・SNSなど、複数のチャネル(経路)を組み合わせた、クロスチャネル展開が吉でしょう。
運用コストを考慮に入れる
運用コストも加味する必要があります。
先述しましたが、LINE公式アカウントの予約機能は飲食店のみです。そのため、LINEで予約を受け付けるのであれば、自社システムや外部ツールの導入は必須。
チャットでの受付も一案ですが、毎回個別のやり取りが発生するため、運用コストの面では非効率です。
また、各担当者との連携が不十分だと、予約のダブルブッキングや、「言った言わない」といったトラブルに発展するケースもあり得るでしょう。
場合によっては、MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客管理)ツールを別途導入するなど、コストがかさむ可能性も考えられます。
不動産業界には「Lステップ」がおすすめ
不動産業界でLINEを活用するなら、Lステップをおすすめします。
Lステップとは、MAやCRM機能を併せ持つ、LINE公式アカウント専用の拡張ツールです。
不動産業界においても、
など、開発・流通・管理にいたるまで、あらゆる現場で導入されています。
ここからは、不動産業界でLステップが選ばれる理由と、活用例をみていきましょう。
顧客情報を自動収集できる
Lステップでは、友だちの行動履歴をもとに、自動で顧客情報の収集・管理を行えます。
特に、不動産のような顧客の属性が多様な業種では、初回アンケートによる顧客データの取得は鉄板です。
入居時期、エリア、予算、職業といった、あらゆる情報を収集し、データは自動で顧客情報へと蓄積。
また、アンケートなどを作成できる回答フォームには、友だち側からの回答時にPDFや画像の添付もできるので、契約書類の電子化や、設備トラブル時の早期解決にも役立ちます。
その他、店舗や担当者が複数いる場合、以下の機能も有用です。
対応漏れや認識の齟齬を抑えられるため、トラブル防止にもつながるでしょう。
競合との差別化につながる
取得した顧客情報は、配信にも活用できます。
例えばアンケートで得た情報をもとに、「単身」「女性」「オートロック希望」など、より細かなセグメント配信が可能です。
また、Lステップのシナリオ配信やリマインダ配信を活用すれば、ブロックされない限り継続的なアプローチが実現します。
例えば賃貸の場合、2年後の更新日から逆算し、以下の流れを自動化できるイメージです。
3ヶ月前:更新予定日のお知らせ
2ヶ月前:同予算の物件紹介
1ヶ月前:更新料の案内
ハウスメーカーの事例では、引き渡し後の定期メンテナンスの案内として、30年分のシナリオを構築しています。
その他、リッチメニューの自由度の高さも、Lステップならではの美点でしょう。
【LINE公式アカウントのリッチメニュー】
【Lステップのリッチメニュー】
顧客の属性ごとにメニューの切り替えもできるため、パーソナライズした情報提供で他社との差別化に寄与します。
クロスチャネル戦略で業務を効率化できる
Lステップのオプション機能「Lメール」を活用すれば、LINEとメールを組み合わせたクロスチャネル配信が可能です。
1通目:LINEで内覧会の案内
2通目:メールで物件情報を配信
3通目:LINEで特典を配信し申し込み促進
Lステップに蓄積した幅広いデータと連携し、上記のような座組を自動化できます。
また、各チャネルのアクションにも連動できるので、①LINEで予約受付→②オーナーにメールで通知、といった活用法も考えられるでしょう。
定期報告に加えて逐一状況を届けられるため、信頼関係の構築にも貢献します。
運用コストを削減できる
さまざまな機能を単体でカバーできるので、運用コストの削減にも効果的です。
中でも特筆すべきが、すべての業種・業態で使える予約管理機能。Lステップで利用できる予約機能は、以下の2種類です。
予約の受付・変更・キャンセルだけなく、リマインドの設定もできるので、予約忘れの抑止にも効果的。
ちなみに、ここまで紹介してきた以下の機能は、Lステップを無料で運用できる「フリープラン」でもご利用いただけます。
- タグ管理
- 予約管理
- 対応マーク
- 回答フォーム
- シナリオ配信
- リマインダ配信
- セグメント配信
Lメールやオペレーター機能など、オプションとも連携できるので、必要な機能を成長に合わせて導入できるのもメリットです。
不動産会社はLINEでやりとりしてみよう
不動産会社がLINE公式アカウントを活用する方法と、メリットを解説しました。
本記事を参考に、ぜひ不動産テックを進めてくださいね。